流出油の性状変化データベース
考察
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1.実験結果と考察

 

(1)夏期、冬期における経時変化実験

(2)経時変化実験による原油の蒸発率

(3)海水温度の中間条件における経時実験

(4)長期経時変化実験

(5)燃料油(重油)の経時変化実験

2.原油の物性によるグループ分類と経時変化パターンとの関連性の検討

3.未実験原油の経時変化推定方法


(4)長期経時変化実験

重質原油のアラビアン・ヘビー原油と中質原油のドバイ原油について、長期経時変化実験を行った。
アラビアン・ヘビー原油を使った夏期における弱い波での経時変化実験の実験期間を96時間から更に延長して、その性状変化を追跡調査した結果、(図-1.9) 一旦形成した強固なムース油の水分、粘度が徐々に低下し、3週間後には水分、粘度共にピーク時のほぼ半分まで低下して、ムース油の分解と海水中への分散が始まった。
また、この時点での蒸発率は31%まで上昇し、原油からC14以下の炭化水素が消失した。形成したムース油が分解するのは、ムース油の粘度が最高値を示した後も蒸発率が徐々に増加することから、一旦水粒子を取り囲んだ油膜の退化が起因しているものと考えられるが、原因ははっきりしない。

図-1.9 アラビアン・ヘビー原油の長期経時変化実験


ドバイ原油を使った夏期における弱い波での経時変化実験の実験期間を96時間からさらに延長して性状を調査した結果、水分の増加に伴って粘度も徐々に増加してムース油を形成し、10日後には30,000cPに達したが、その後ムース油に分解の兆しが見られ、海水中に微細な油滴の分散が確認された。しかし、ムース油の分解がそれ以上進行せず、24日後でも40,000cP台の高粘度のムース油を維持していた。
中質原油と重質原油での違いについて、図-1.10に両者の粘度変化を比較して示している。

図-1.10 アラビアン・ヘビー原油とドバイ原油の粘度変化の比較


アラビアン・ヘビー原油の場合には、2週間経過後頃から粘度の低下が顕著になり、ムース油の分解傾向が現れてきた。しかし、ドバイ原油の場合は、粘度の低下は見られなかったが、海水面の観察では2週間経過頃からムース油の分解による油滴の水中分散が確認されており、いずれの原油も2週間経過頃から徐々にムース油の分解が始まったものと思われる。
したがって、一旦形成したムース油は長時間、波間を漂ううちに徐々に分解するものといえる。ムース油の分解が始まる時点では、C13以下の炭化水素成分が消失していることが実験結果から判明しているが、C13以下の消失と、ムース油の分解の因果関係は現状では不明である。ムース油の分解の原因については、ムース油の物理的変化によるものか、あるいは原油を構成している成分の化学的変化によるものか種々考えられるが、はっきりしない。

(3)海水温度の中間条件における経時実験

(5)燃料油(重油)の経時変化実験